訪問看護ステーション経営研究会

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【訪問看護】各運営スタンスのメリット・デメリット ①精神編

訪問看護ステーションを起業したい、既に経営している方に向けて、代表される各運営スタンスのメリット・デメリットについて、シリーズで解説していきます。今回は、訪問看護ステーションの基準に係る届出のうち、精神科訪問看護基本療養費について詳しく解説していきます。

 

この記事は以下のような人におすすめです

  • ステーション基準に係る届出をどうすれば良いかわからない
  • 加算に係る管理の手間などを考えて取得すべきかどうかわからない
  • どのようなスタンスの訪問看護ステーションにすべきか悩んでいる
  • 訪問看護事業を成功させたい 

 

1.何をするための届出なのか

精神科訪問看護基本療養費の届出とは、平たく表現すれば、精神科訪問看護指示書が発行された場合に対応できるか否か、つまり精神疾患を有する方に対する訪問看護を実施するか否か、に係る届出です。さらに言い方を変えれば、精神疾患を有する方に対する訪問看護の依頼を受けるか否か、を決めることになります。

2.届出をすることのメリット

 ①受けられる依頼の幅が広がる

届出をした場合、精神科訪問看護指示書の発行に対応することができるようになります。純粋に受けられる依頼の幅が広がり、依頼数は多くなりやすくなります。依頼元は精神科を有する医療機関、居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)、自治体で地域を担当する保健師、地域の精神障害者等を支援する団体等です。収益面だけを考慮すれば、収益性は上がりやすくなると言えるでしょう。

 ②管理・実地指導対策の手間が少ない

精神科訪問看護介護保険分野と必ずしも交わらないこともあり、介護保険による報酬算定をしている訪問看護ステーションと比較して、書類管理や実地指導対策の手間が段違いに少ないと言えます。実地指導の中でも報酬面での指導においては、主に介護保険報酬に対する指導であることを考慮すれば当然ですが、そもそも精神科訪問看護基本療養費は実地指導の対象にはなりづらく、実地指導で警戒すべき返戻等の対象にはなりづらいと言えるでしょう。

 ③報酬が高値で安定しやすい

精神科訪問看護の訪問1件あたりの報酬は約9,000円で、あまり大きな変動がありません。介護保険での報酬が約3,000円〜12,000円でバラつきがあり、依頼内容等によって変動があることと比較すると、ある程度の高値で安定していると言えるでしょう。また、月毎・年毎の訪問単価が安定しやすいため、事業の規模が変わったとしても、堅実な事業計画を作成しやすいと言えるでしょう。

3.届出をすることのデメリット

 ①報酬の現金化が遅くなりやすい

精神科訪問看護は、特に訪問開始後の数ヶ月間、報酬の現金化が遅くなりやすいという特徴があります。精神科訪問看護のほとんどは、基本的には自立支援医療の枠組みの中で行われます。自立支援医療の枠組みで訪問看護を利用するには、自治体等の窓口から利用する訪問看護ステーションを届出しなければなりません。その届出が承認されるまでは、自立支援医療の枠組みで請求することはできなくなります。それでも一般の医療保険介護保険のように最短期間で請求をする方法はありますが、利用者自己負担がある場合は自己負担額が増加したり、そもそも生活保護受給者である場合は福祉課の担当者の裁量によってきたりする(自立支援医療の枠組みで請求を行うか否かの判断)ため、いずれにしても利用者や関係者に対して事前の入念な確認をしておく必要があります。自立支援医療の枠組みで請求する場合は、届出から承認までの数ヶ月間の請求が停止することとなり、その間の報酬算定ができなくなります。

 ②スタッフが算定要件を満たしている必要がある

そもそも、精神科訪問看護基本療養費の届出をするにあたり、一定の要件を満たしたスタッフを配置している必要があります。一定の要件を満たすにはいくつかの方法(経歴や経験、研修等)があります。また、届出をして、精神疾患を有する方に対する訪問看護を開始したとしても、特定のスタッフでしか対応ができず、スケジュール調整やシフト調整、採用面での負担となりやすいと言えるでしょう。また、一定の要件を満たすための研修参加に係る費用や時間等もデメリットと言えるでしょう。

まとめ

届出の要件を満たしている場合は、ひとまず届出をしておいて、依頼を受けるタイミングで実際に訪問するかどうかを検討する、という手段もありますが、事前にしっかりと訪問看護ステーションの運営スタンスを決めてから届出をすることをお勧めします。要件を満たしているだけでは利用者に対して良いサービスは提供できません。収益性を考慮することと、精神疾患を有する方の在宅生活を支援したいという熱い想いを両立してこそ、精神科訪問看護基本療養費の届出をする資格があると言えるでしょう。