訪問看護ステーション経営研究会

多数店舗展開訪看ステーション統括経験者による訪看経営コンサルティング

【訪問看護】事業を成功に導く営業活動③ 〜リピーター編〜

訪問看護ステーションの経営を成功させるためには、収益の黒字化が最重要課題です。新規の依頼もリピートされなければ収益化が遅くなってしまいます。収益の黒字化に直接結びつく営業活動の展開方法、今回はリピーターの増やし方について詳しく解説していきます。

 

この記事は以下のような人におすすめです

  • 利用者数、売上高が思うように伸びない
  • 営業活動をどのように展開すればいいのかわからない
  • リピーターが増えない
  • 訪問看護事業を成功させたい 

 

1.顧客(依頼者)が何を必要としているのかを考える

サービス提供の大前提として、利用者が満足することが第一です。ただ、訪問看護サービスにだけ満足するのではあまり意味がありません。地域包括ケアシステムに則って、訪問看護だけがサービスを提供することは非常に稀です。つまり、利用者の生活において訪問看護が関わっているのは全利用サービス中、何割でしかないのです。つまり、QOL向上を実現するには、できれば全てのサービスに満足してもらってこそ意味があります。職種の範囲に囚われず、サービス提供中の些細な気づきを共有することや、他職種もサービスの提供がしやすいように努めることは、地域包括ケアチーム全体のサービスの質を向上させやすくし、結果的に利用者の満足度向上につながるでしょう。地域包括ケアチーム各職種の業務を理解し、常に何をしたら喜ばれるのかを考えて行動するようにしましょう。そうすることによって、信頼や”やりやすさ”を感じてもらえれば、リピートにつながるはずです。

2.定期的に顔を出す(または連絡する)

身近な存在であることを示すことで、相手の希望や不満を聞き取りやすくできます。また、純粋にコミュニケーションの機会を増やすことで、信頼関係が構築されやすくなるでしょう。顔を出す時には、必ず伝えて有意義だと思われる利用者や関係者の状態や情報を持っていくようにしましょう。特に、新規利用者を依頼された際や、看取りやそれに近いことをした際、救急搬送した際、利用終了した際、医師からの指示が変更された際、提供する看護の内容が変更された際など、顔を出す理由は無数にあります。特に、前述したような事柄が発生した際は必ず連絡するようにしましょう。これらの行動はほぼマニュアル通りに行えばいいことであることに加え、既存顧客への営業活動となり、リピーター増加につながることでしょう。

3.顧客(依頼者)の負担はできるだけ減らす

相手がケアマネジャーであれば、指示書の依頼やケアプラン作成補助(訪問看護サービス)、利用者との契約を事前に締結しておく(担当者会議時等はケアマネ含め他サービスの契約が重複する為)、サービスコードや利用単位数の送付、医療介入時の情報提供、訪問看護計画書等の迅速な共有などは極力行いましょう。

相手が医療機関(入院先)の場合は、ケアマネジャー等の関係機関の紹介(求められれば)や指示書作成時の要望等を正確に伝えること(訂正が必要になるとかなり手間)、退院支援室やそれに準ずる部署等が整備されておらず、病棟看護師が退院の担当の場合は在宅チームとの橋渡し、退院時処方の有無・内容をすり合わせること等は、当然の事かもしれませんが抜かりなく行うようにしましょう。

相手が在宅医療機関(訪問診療を行うクリニック等)の場合は、初回訪問日の打ち合わせ(処置や点滴等が必要であれば入院先から発行された指示書で先に訪問しておき、訪問診療の初回訪問日に同行、その場で指示内容等の打ち合わせをする)、緊急時対応の打ち合わせ(相手のスタンスに合わせられればなるべく合わせる)、特に指示の切れ目での情報提供は詳細にする、利用者の状態から近日中の予測を伝える(基本的に訪問看護の方が訪問回数が多いので状態把握がしやすい為)、利用者やその家族に対して、医師の意向や説明が伝わりやすくなるようにコミュニケーションを取ること等は極力行うようにしましょう。

相手から求められることに応じて、以上のことが確実に出来ていれば、少なくとも敬遠されることはないでしょう。関係機関がいかに手間が少なく、動きやすく、気持ちよくなれるのかを考えての行動を心がけましょう。

まとめ

 繰り返しになりますが、最も満足させなければならないのは利用者です。顧客(依頼者)の要望が利用者の不利益になると判断した場合は、必ず改善に向けた意見をするようにしましょう。利用者の快適な在宅生活を大前提とし、顧客(依頼者)の希望を満たすことで、利用者と共に、顧客(依頼者)のストックも確実に増やしていきましょう。

 

【訪問看護】訪問看護ステーションの事業モデルを徹底解説!

訪問看護ステーションの経営に興味がある方に向けて、訪問看護ステーションの事業モデルについて概要を解説していきます。

 

この記事は以下のような人におすすめです

  • 訪問看護ステーションの経営に興味がある
  • 訪問看護の事業モデルを知りたい
  • 事業の収益性や運営の社会的意義について知りたい
  • 事業への参入ハードルの高さを把握したい
  • 事業を成功させたい 

 

1.ストック型ビジネスモデル

訪問看護は、利用者との契約締結により、サービスを提供することによって基本的に毎月の収益が発生するというストック型のビジネスモデルです。ストック型には1度契約を締結してしまえば、毎月安定した収益獲得が可能になるメリットがある一方で、収益が一定基準に達するまでに時間がかかりやすいというデメリットもあります。

2.損益分岐点到達までの期間が長い

販売管理費のかけ方にもよりますが、訪問看護事業の場合、損益分岐点到達時の利用者人数が30〜40名程度です。仮に月の利用者純増数を5名と仮定した場合、損益分岐点到達までの期間は6〜8ヶ月ということになります。ステーション開設初月は、周囲に全く認知されていない状態からのスタートとなるため、依頼(受注)を受けるのは簡単ではありません。また、獲得した利用者が、入院したり死亡したりするケースが、サービスの性質上当たり前のようにある為、月の利用者純増人数5名の設定でも高いハードルと言っていいでしょう。訪問看護事業成功の為のピースが全て揃っていれば、6ヶ月未満での単月黒字化も十分に可能ですが、通常は上手くいったとしても1年〜1年半の赤字は見ておくのが無難です。また、保険制度を利用する為、債権の現金化も遅くなります。ゆえに、初期投資、運転資金合わせて2,000〜3,000万円の資金準備が必要になるでしょう。

3.エリア性が重要視される

訪問看護は、法によって定められた所要時間の訪問を、基本的に営業時間内に提供するため、1日に提供できる訪問件数には限界があります。また、利用者の自宅や施設への訪問となり、移動を伴うため、移動時間も計算に入れる必要があります。人口密度、要介護認定者率、訪問看護サービス利用者率、サービス競合率などを考慮した市場性が高いエリアでなければ基本的には闘えません。極端なことを言えば、山間部や離島などの過疎地域でのステーション開設は、社会的意義は大いにありますが、収益性は全くありません。東京都23区のような人口密集地域であれば別ですが、事前の入念かつ正確なエリアマーケティングがマストと言えるでしょう。

4.営業利益率30%を目指せる

適切な人員配置、稼働率を維持できている前提ですが、ステーションの月あたり売上が500万円前後に到達するタイミングから、営業利益率は安定していきます。そして、1,000万円に到達するタイミングから、営業利益率30%達成は現実的に可能となってきます。

5.社会的意義・安定性が大きい

訪問看護という事業は、在宅医療や在宅介護等、地域包括ケアシステムという社会的インフラに組み込まれています。さらに、新型コロナウィルスの影響で、在宅医療の必要性はますます高くなっています。将来的な展望については断言できませんが、政府の施策やパラダイムシフトが急激に起きない限り、永続性のある事業と言ってもあながち間違いではないでしょう。

6.買収・事業継承が最も効率的

収益面、資金面での安定性、効率性を優先するのであれば、既に利用者やスタッフを抱えている訪問看護ステーションの買収や事業継承・譲渡などが最も効果的です。訪問看護事業のデメリットは、主に①高額な採用費と、前述した②損益分岐点までにかかる時間と運転費用です。買収や事業継承などは、この2つのデメリットをカバーしやすい方法と言えるでしょう。

まとめ

訪問看護事業は、法で定められた人員配置を満たせなくなること、資金面の問題等で新規設立ステーションの約半数が、休止または閉鎖を余儀なくされています。利用者や関係機関、スタッフに迷惑をかけない為にも、採用やマーケティング等の入念な準備、十分な資金の準備によって、安定した事業運営を心がけましょう。

【訪問看護】訪問看護事業とシナジーを出しやすい事業3選

訪問看護事業以外にも事業展開をしたい方に向けて、シナジーを出しやすい事業について詳しく解説していきます。

 

この記事は以下のような人におすすめです

 

1.訪問診療を主とした診療所(以下クリニックと呼称)

クリニックは訪問看護サービスの依頼元となるのと同時に依頼先にもなります。また、クリニック運営は訪問看護に対するサービス依頼が必須となるため、訪問看護の依頼がクリニック運営の副産物として生成されます。さらに、訪問診療を必要とする利用者は医療依存度が比較的高い傾向にあり、客単価が高くなりやすいと言えます。つまり、訪問看護ステーションとしては、何もしなくても高単価な依頼が来る状態となるため、シナジーを出しやすいと言えるでしょう。また、ケアマネと異なり同一法人への依頼割合で減算等の制度もないため、全ての依頼を減算無しで内部で消化することが可能です。収益面以外では、同一(関係)法人ならではのシームレスな連携によって高いクオリティーのサービスの提供がしやすくなります。

一方で、医師をはじめとする人材確保や高額な運転資金等、参入障壁が高いのが課題と言えるでしょう。

2.住宅型有料老人ホーム

住宅型有料等人ホームは、制度上直接の依頼元とはなりませんが、利用者やその家族、関係機関に対して同一(関係)法人ならではのシームレスな連携が可能という強みをアピールできれば、入居前や入居時のタイミングで依頼につながりやすいと言えます。また、訪問看護事業中心の視点で述べるのであれば、有料老人ホームの依頼元に対して医療依存度の高い利用者を中心に入居を勧めることで、客単価を上げることが可能です。また、空室(一時的でも)があれば、訪問看護サービスの利用者のレスパイト入所先としても利用できるでしょう。ただ、医療依存度の高さは空室リスクと常に隣り合わせです。また、訪問系サービスにおける同一建物等減算、事業自体に高額な設備投資や夜勤者を含めた人材確保、高額になりがちな運転資金等が必要になることから、主に資金面での参入障壁が比較的高いことが課題と言えるでしょう。

3.居宅介護支援事業所

こちらは訪問看護サービスの主に依頼元であり、やりようによっては依頼先にもなるため、シナジーを出しやすいと言っていいでしょう。また、単位調整や情報共有など、他法人間のやり取りで支障をきたしやすい部分が解消されやすいのは大きなメリットです。また、大雑把に表現すると主任ケアマネの確保ができれば開設可能であり、訪問看護ステーションと併設可能(同一事務所内の開設が可能)なため、コスト面において参入障壁は低いと言えるでしょう。

一方で、居宅介護支援事業所自体の独立採算性が低いこと、ケアマネが担当できる利用者には制限があること(制限を超えると減算になる&キャパシティ的に難しい)、同一法人への依頼割合制限を超えると減算になること等の課題もあり、ケアマネ一人が訪問看護事業に還元できる利益は限られます。収益性を優先するのであれば、あくまでも訪問看護事業のカンフル剤程度に考えておくのが無難と言えるでしょう。

まとめ

訪問看護事業とシナジーを出しやすい事業は他にもありますが、今回は中でもシンプルでわかりやすい事業に絞りました。訪問看護事業が軌道に乗り、潤沢な資金を確保することができたなら、訪問看護以外の事業への参入も検討してもいいかもしれません。