訪問看護ステーション経営研究会

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【訪問看護】 管理者に絶対必要な能力5選

訪問看護ステーションの経営を成功させるための最重要ファクターの一つが、管理者選びです。管理者(こちらの記事では管理者=所長)に必要な能力について詳しく解説していきます。

 

この記事は以下のような人におすすめです

  • 管理者に必要な能力を知りたい
  • 管理者採用・教育の指針を決めたい
  • 訪問看護事業を成功させたい 

 

1.管理者たる人間性

精神論のように聞こえてしまうかもしれませんが、最も重要な資質です。経験や技術は努力で身につけることができますが、数十年の人生を生きてきたその人の人間性を変えるのは、困難を極めるでしょう。真面目に働く気がない、口だけで行動が伴わない、本当に医療者かと疑ってしまうような言動が多い、責任感が欠如している、人の悪口が多い、すぐに仲間を売る、自己中心的で利用者や他のスタッフに対する思いやりがない、など、一つでも当てはまるものがあれば管理者としてはうまくいかないでしょう。ただ、採用の面接など、限られた時間で判断するのはなかなか難しいでしょう。医療者としての人間性を評価する質問としては、その人が今までのキャリアでどのように利用者(患者)と接してきたのか、人として、医療者として何を感じ、何を学んできたのか、ストーリーを話してもらうのがいいでしょう。

2.専門職としての技術・経験

訪問看護のスタッフは治療者です。訪問看護の利用者やその家族の立場になって、仮にスタッフを選べる立場であるとしたら、みなさんは経験が豊富で技術レベルの高いスタッフと、技術も経験もないスタッフであればどちらを選ぶでしょう。訪問看護サービスに期待している人ほど、前者を選ぶはずです。また、管理者は一般スタッフを管理・教育する役割も担います。一般スタッフがより質の高いサービスを提供できるようになるためには、質の高い教育環境が必要不可欠です。直接教育することはもちろん、教育に適した環境を整えていく上で、管理者自身の技術や経験は必須レベルでしょう。また、訪問看護サービスを提供する上で避けて通れないのが利用者の状態変化への対応です。利用者の状態急変はもちろんその場での対応が必要になりますが、徐々に時間をかけて変化していくこともあります。そういった場合は、医師やその他関係機関と連携して今後の対応を決めていくことになるわけですが、訪問看護ステーションの管理者はそれを主導する立場にあります(場合によるが訪問看護主導になるケースは多い)。その際、今までの経験や技術に基づく適切な対応ができなければ、利用者はもちろんのこと、関係機関にも多大な迷惑をかけることとなり、信頼を失うと共に、その後の依頼に繋がらないことになり兼ねません。できれば在宅での経験がある、もしくはそれに準じた経験があることを前提とするのがいいでしょう。

3.制度・請求関係に関する知識

制度や請求についての知識は、家電を売るセールスマンに例えると必要性が理解しやすいかと思います。あなたがTVを買いたくて、セールスマンに各商品の特徴を聞いたとします。要点をまとめてわかりやすく説明し、今の自分の境遇や住環境などのニーズ・ホープに合わせてお勧めの商品を提案してくれるセールスマンと、マニュアルを読みながらとりあえず対応をするセールスマンでは、どちらの商品がよく売れ、あなたを満足させてくれるでしょうか。答えは言うまでもないでしょう。また、制度や請求に関する知識は、訪問看護ステーションの請求業務に直結します。つまり、間違えると保険者から入金がされない等の請求エラーが起こります。事業の運営にダイレクトに影響してしまうのです。ただ、これらの知識に関しては、1年ほど現場で勉強しながら経験を積めば、十分に使えるレベルに到達することが可能です。逆に現場で1年勉強しても全く理解できない、という人は管理者に向いていないと言えるでしょう。

4.コミュニケーション能力・洞察力

利用者やその家族のニーズ・ホープは人それぞれであり、答えは一つではありません。訪問スタッフは管理者を筆頭に、利用者やその家族が何を望んでいるのか、本当に必要なサービスは何なのかを、専門的知識・経験と洞察力をもって現場で判断し、提案し続けていかなければなりません。提案は基本的には利用者とその家族に対してなされますが、医師をはじめとする関係機関のチームにも必要性を説き、納得させるだけのコミュニケーション能力が必要となります。これが上手くできればできるほど、利用者や関係機関からの満足度は上がりますし、利用のリピーターも増えるでしょう。また、これは対外的にだけ働く力ではありません。ステーションのスタッフについても同じことが言えるのです。スタッフのニーズ・ホープを的確に認識することで、スタッフが満足して働ける環境を整えることができ、生産性の向上や離職率低下につなげることができます。トラブル対応が減ることで、生産性の低い管理者の業務は減り、収益増加に充てる業務時間が確保できます。

5.事務処理能力

管理者には避けては通れない事務業務が多数存在します。事務スタッフを雇用し、直接の事務業務を割り振ったとしても、管理者の事務業務には専門的知識を有するものが多いため、完全に分離することは不可能です。事務処理能力が著しく低い方は、そこにかなりの時間を費やしてしまうことになってしまい、他の業務が疎かになるか、自らのプライベートの時間を削ることになってしまいがちです。例えば、訪問スタッフのスケジュール管理を管理者が担っているケースでは、顕著に能力の差が現れてしまいます。佐川やヤマトなどの配送業者が日々の配送で最高の動線を組むのと同じように、訪問では移動が伴うため、動線組みの失敗による効率低下は命取りになります。専門職としては優秀であっても事務処理能力が高いとは限りません。事務業務が苦手な方が管理者となる場合は、それを補う人事やシステム、環境整備を前もって検討するのがいいでしょう。

まとめ

管理者の業務は多岐に渡ります。規模の小さなステーションであればそれなりに管理業務は遂行可能でしょう。しかし収益性を意識するあまり、形だけの管理者を据えることは、ステーションの崩壊を招きます。改めて管理者に必要な能力や資質を理解し、管理者のあるべき姿を明確にした上で、採用や教育に取り組まれるのが良いでしょう。