訪問看護ステーション経営研究会

多数店舗展開訪看ステーション統括経験者による訪看経営コンサルティング

【訪問看護】 これで作れる! 訪問看護の収支計画

訪問看護ステーションを経営している、またはこれから起業を考えている、現在所長をやっている、事業の収支に興味があるという方に、事業所の収支計画の作り方について解説していきます。

今回の記事では、訪問看護ステーション開設や法人設立、物件取得費用や初期車両購入費、準備期間にかかる運転費用等は考慮せず、月々の収支に限定して解説していきます。

 

この記事は以下のような人におすすめです

 

1.収入計画

 1-①設定を確認する

収入計画を作成する際、以下の設定をあらかじめ確認し、決めておきましょう。

  • 初期人員計画
  • 訪問単価
  • 利用者純増
  • 訪問件数/利用者/月
  • 訪問件数/人(スタッフ1人当たりの訪問件数/月)
  初期人員計画

訪問看護ステーション初期の人員配置です。指定申請上の違反にならないよう、初期人員は常勤定数2.5人ギリギリにならないようにある程度の余裕が必要です。流動性の激しい職種ですので最低でも看護師常勤3人、安全なのは4人以上です。

  訪問単価

訪問1件あたりの価格を指します。介護保険を取り扱う場合は地域によって保険1単位あたりの単価が異なりますので等級を考慮する必要があります。また、地域等級意外にも、訪問単価はどのようなコンセプトの訪問看護ステーションにしたいか、手厚く訪問するのか否かなど、スタンスによって変わります。8,000円前後で設定するのが良いでしょう。厳しい数字で作りたければ7,000円でも良いかもしれません。

  利用者純増

利用者人数の純増数/月です。入院や死亡等の利用修了要因も考慮した上で設定しましょう。例えば新規利用者が5人いて、終了者が2人いれば、純増数/月は3人となります。入念なエリアマーケティングをした上で、純増数5人以上で設定するのがいいでしょう。

  訪問件数/利用者/月

利用者1人の、ひと月あたりの訪問件数です。こちらも訪問看護ステーションのコンセプトやスタンスによりますが、月4〜8回で設定するのがいいでしょう。週1の利用者が大半を占める場合は月4〜5回、週2が大半であれば8回、といった具合で設定しましょう。わからない場合はとりあえず6回で設定しておきましょう。

  訪問件数/人(スタッフ1人当たりの訪問件数/月)

スタッフ1人の、ひと月あたりの訪問件数上限です。稼働日数を月20日とした時、1日の訪問件数を4件とすれば80件(20×4=80)、5件とすれば100件(20×5=100)となります。エリア性を考慮して決めるのが良いでしょう。  

 1-②各値の求め方

収入計画を作成する際、月の売上高が設定できていれば最低限良い訳ですが、計画的な採用や月単位の目標設定、実績評価等に必要な項目があれば、より堅実な運営が可能となりますし、融資を受ける際リアリティのある事業計画書の作成が可能でしょう。また、ステーションの運営状況の分析に欠かせない項目です。以下の項目を設けた上で、各項目の数値の求め方を確認しましょう。

  • 利用者人数
  • 訪問件数/月
  • 人員計画
  • 売上高
   利用者人数

訪問看護ステーション運営は、利用者を獲得して増やしていく、1度獲得してしまえば修了にならない限りは利用が継続するという、いわゆるストック型のビジネスです。利用者人数の把握はステーションの運営状況の分析に欠かせません。また、訪問件数/月の設定の目安となります。求め方は以下の通りです。

利用者純増×経過月数

例)利用者純増数の設定が5人、運営開始10ヶ月目の利用者人数は50人(5×10=50)

   訪問件数/月

月の訪問件数総計です。訪問単価計算(実績)や人員計画の設定の目安となります。求め方は以下の通りです。

利用者人数×訪問件数/利用者/月

例)利用者人数が20名、訪問件数/利用者/月の設定が8回の場合、訪問件数/月は160件(20×8=160)

  人員計画

採用計画や稼働率計算の目安になります。なお、人員計画は支出の際に非常に重要となりますので必ず押さえておきましょう。求め方は以下の通りです。

訪問件数/月÷訪問件数/人

例)訪問件数/月が500件、訪問件数/人の設定が100件の場合、人員配置は5人(500÷100=5)

また、端数が出た場合は端数分の非常勤スタッフを雇用することも可能ですが、繰り上げておくのが無難でしょう。

  売上高

この値が無ければ収支計画として成り立ちません。求め方は以下の通りです。

訪問件数/月×訪問単価

例)訪問件数/月が500件、訪問単価の設定が8,000円の場合、売上高は400万円(500×8,000=4,000,000)

また、保険請求の実際の入金は約2ヶ月後です。考慮する場合は売上高を2ヶ月後にずらすと良いでしょう。ファクタリングを利用する場合は1ヶ月ずらした後、債権買取の割合を考慮しましょう。さらに言えば請求通過率(請求業務のエラーを考慮)を考慮する等も考えられますが、どこまで詳細に作成するかについては、必要に応じて決めるのが良いでしょう。

2.支出計画

 2-①設定を確認する

支出計画を作成する際、以下の設定をあらかじめ確認し、決めておきましょう。

  • 給与(所長・一般スタッフ)
  • 利用するツール・システム・ソリューション・外注業務
  給与

所長と一般スタッフの給与設定です。エリア性やインセンティブの有無や程度を考慮して決めるのが良いでしょう。年収相場は有料人材紹介のエージェントや求職サイトで確認しましょう。

  利用するツール・システム・ソリューション・外注業務

例えば勤怠管理や人事・労務管理、給与計算にクラウドシステムを利用する場合、それらのランニングコストを支出項目に計上する必要があります。また、その他のシステム、ソリューション利用にかかるコスト、税務関連などを外注した場合の外注コストもそれぞれ計上する必要があります。法人運営と訪問看護ステーション事業運営にかかるコストをそれぞれ分けて考えるのか、同一の収支として見たいのかは、必要に応じてカスタマイズすると良いでしょう。

 2-②支出項目を確認し、値を当てはめる

①で設定した内容で支出項目を決定し、コストをそれぞれ当てはめていきましょう。値が固定もしくは半固定されている項目と、スタッフの人数や訪問件数等によって変動する値があることに注意してください。Excel等で作成する場合は、変動費は簡単な数式で表現するとわかりやすいでしょう。支出項目について詳しくは訪問看護】 事業所の収支項目を徹底解説!にて解説していますので併せてご覧ください。

まとめ

いかがだったでしょうか。正確でリアリティのある収支計画は事業を成功へと導く道標です。是非妥協せずに作成に取り組んでみてください。また、収支のみならず事業計画の正確性とリアリティはエリアマーケティング次第と言っていいでしょう。綿密なエリアマーケティングが土台に無ければ収支計画は机上の空論、絵に描いた餅でしかありません。これから新規出店や起業をお考えの方は、もう一度エリア性について検討してみてはいかがでしょうか。